ACTIVITY 活動内容・取り組み

月の地下構造推定

月周回衛星「かぐや」に搭載された月レーダサウンダー(LRS)は5 MHzの電波をアンテナから月面に向けて発射し,地層境界のような電気的性質の不連続面からの反射波を捉えることによって月の地下構造を明らかにすることを目的とした観測機器です.月の表面の暗い部分は海と呼ばれ,玄武岩に覆われた平坦な地形をしています.一方,明るい部分は高地と呼ばれ,斜長岩からなり,起伏が大きく,多数のクレータに覆われています.LRSは月の表側の海領域において地下数百mからの反射波を観測しました.海の玄武岩が大規模な溶岩流として噴出して冷え固まった後,玄武岩の上にはレゴリスが数10 cmから数m程度の厚さで堆積したと考えられます.さらに溶岩流がその上に流れると,溶岩層の間にレゴリス層がサンドイッチされたような構造になり,この層状構造の境界面で電波が強く反射したと思われます.我々は既存の地質年代マップとの比較からこれらの地下反射面を同定し,深さを読み取ることで,空間的な分布を調査しています.

地下構造推定
図1:晴れの海における地下反射面. (上)LRSの軌道. (下)LRS観測データ. 横軸は緯度,縦軸は見かけの深さ,グレースケールは反射波強度を表す.明瞭な2つ地下反射面があることがわかる.表面と地下反射面間の見かけ深さを読み取り,地下の誘電率(4〜11程度)の平方根で割ると,実際の深さとなる.(大画像

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