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月の可視近赤外ハイパースペクトルマップ

月の可視近赤外ハイパースペクトルマップ
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かぐやスペクトルプロファイラ(SP)について

月周回衛星「かぐや」(SELENE)は2007年9月から2009年6月にかけて月を周回し,観測を行いました. 観測装置のひとつスペクトルプロファイラ(SP)は,高度100kmの軌道から光の波長範囲0.5~2.6μm(可視・近赤外光)を数nmおきに観測しました. SPは1回の露光で月面上約500m幅の1地点の分光観測データ(各波長での反射光強度)を得ます. 「かぐや」が月を約7000周回する間に, SPは約7000万地点の観測データを取得しました.

SPの機器詳細

http://www.selene.jaxa.jp/ja/equipment/tc_j.htm
機器詳細の研究論文:Matsunaga et al. (2008); Yamamoto et al. (2011); Yamamoto et al. (2014)

「かぐや」本体側面に搭載されたスペクトルプロファイラ
図:「かぐや」本体側面に搭載されたスペクトルプロファイラ(中央).(©JAXA)

全球月反射率地図

本ページで紹介するデータプロダクトは,SPデータから作成した緯経度1度及び0.5度メッシュ(マス目)の全球月反射率地図です.緯経度幅の1度は,月の赤道では約30kmに相当します.SPはカメラではありませんが,各マス目内のデータを集めることで全球地図画像ができました(Yokota et al. 2011).作成した波長範囲は0.51~1.65μmで、160バンドが含まれています。本ページのトップ画像(0.5度メッシュ)は、4つのバンド(0.51、0.75、0.95、1.55μm)の組み合わせで「色」を強調したものです.また,地形との対応がわかるように,「かぐや」レーザー高度計(LALT)地形データの陰影を重ねてあります.

このように作成した多バンド地図は,2次元の画像データがバンド枚数ぶんの層になったデジタルファイルになっています.このようなファイルを,天文学や地球惑星科学ではキューブ(cube)ファイルと呼びます.また,観測波長範囲が隈なく埋まっている分光データはハイパースペクトルデータと呼ばれます.

この月面反射率のハイパースペクトルマップは,月の地質解析に有用です.研究論文 Hareyama et al. (2019)ではクラスタリング手法を適用した地質区分図が作成されています.また,応用として,他の探査機や衛星の光学観測機器が月を観測して校正(機器のチェック)を行う用途も産総研で開発されています(Kouyama et al. 2016).

References

  • Hareyama M. et al. (2019). Global classification of lunar reflectance spectra obtained by Kaguya (SELENE): Implication for hidden basaltic materials. Icarus 321, 407–425. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2018.11.016.
  • Kouyama T. et al. (2016). Development of an application scheme for the Selene/SP lunar reflectance model for radiometric calibration of hyperspectral and multispectral sensors. Planet. Space Sci. 124, 76–83. https://doi.org/10.1016/j.pss.2016.02.003.
  • Matsunaga, T. et al. (2008). Discoveries on the lithology of lunar crater central peaks by selene spectral profiler. Geophys. Res. Lett. 35, L23201. https://doi.org/10.1029/2008GL035868.
  • Yamamoto S. et al. (2011). Preflight and inflight calibration of the spectral profiler on board Selene (Kaguya). IEEE Trans. Geosci. Remote Sens. 49, 4660–4676. https://doi.org/10.1109/TGRS.2011.2144990.
  • Yamamoto, S. et al. (2014). Calibration of NIR 2 of spectral profiler onboard Kaguya/SELENE. IEEE Trans. Geosci. Remote Sens. 52,6882–6898. https://doi.org/10.1109/TGRS.2014.2304581.
  • Yokota, Y. et al. (2011). Lunar photometric properties at wavelengths 0.5-1.6 acquired by Selene spectral profiler and their dependency on local albedo and latitudinal zones. Icarus 215, 639–660. https://doi.org/10.1016/j.icarus.2011.07.028.
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